BGMを再生しますか?
Yes
No
 BGM ON
 BGM OFF
今夜も印香に火をつけ、私は夢幻楼を訪れた。そこは、夢の中でしか行くことができない、幻の遊郭。
受付で選ぶのは、人嫌いで潔癖な男娼、冬澄椿くんだ。
椿
「またアンタ? 俺を指名するんだ。まぁ、いいけど....」
案内されたのは、清らかな空気に満たされた、植物好きの椿くんらしい部屋だった。
部屋を見回しながら立っている彼を見ると、ふと、いつもしている手袋が目に入る。
あなた
「どうしていつも手袋をしているの?」
椿
「さあ」
あなた
「直接触れ合いたくない……とか?」
椿
「そうかもね。わかっていると思うけど、キスなんていう触れ合いはもってのほかだ。人間相手には特にね」
切なく表情を陰らせる椿くんは、ただ人間を憎んでいるだけ――には見えないけれど。
あなた
「昔からずっと人間のことが嫌いなの?」
椿
「昔は……。さあね」
そう言って、どこか遠くを見つめる椿くん。その瞳には切ない色が浮かんでいる。
何が彼をここまでの人間嫌いにさせたのだろう。さらに尋ねようとしたけれど……
椿
「……この話は終わり。アンタに教える義理はないし、この先も話すことはないと思う」
あなた
「そんな……っ」
椿
「それより、ほら。早くベッドに横になりなよ。……そのために印香を使って夢幻楼にきたんでしょ」
椿
「触れないままでも、アンタを満足させることは出来るから。さっさと終わらせてあげる」
©2024 EXNOA LLC  developed by CYBIRD