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あなた
「かくれんぼしてる訳じゃないんです。私、ここで迷子になっちゃってて、それで――」
???
「迷子? 何それ。何でもいいから遊ぼうよ。出て、出て」
あなた
(こ、この人全く話を聞く気がない……簡単についていくなって言われてた、けど)
抗いがたい危険な魅力に、気付けばリネン室から引きずり出されていた。
???
「今夜は色んな蝶が来るから、大人しくしてるようにって言われたんだ。ひどいよねー」
???
「君みたいな玩具が見つけられたからもういいけど」
あなた
「あの、私あなたと遊んでる場合じゃないんです。元の場所に戻らなきゃ――」
???
「んー、大丈夫。すぐに僕が余計なこと何も考えられなくしてあげる。ほら、こっち」
あなた
(ぜ、全然大丈夫、じゃない!)
???
「ヘイロン。ここにいたのか」
制止の声がかかったのは、腰を抱かれて引きずられるように廊下を進んでいる時だった。
???
「その蝶はお前の玩具じゃない。それに今夜は大人しくしてるよう楼主様に言われているはずだ」
ヘイロン
「……は? 邪魔しないでくれない? 獅子雄」
危険な手が私の腰からするりと離れ、代わりに眼鏡の彼の首から伸びたリードを乱暴に引く。
あなた
(ど、どうしよう……喧嘩? 私どうすれば……)
獅子雄
「……行ってください」
眼鏡の彼が、私に小声で促す。乱暴をされているのは彼なのに、その美声には気遣いが滲んでいた。
獅子雄
「自分は頑丈ですし、ヘイロンも本気じゃない。大丈夫です。今のうちに」
私はリネン室の前の廊下を離れ、さらに建物の中をひたすらに進み――ドアが開かれたままのある部屋に入る。
そこでまた、出逢った。途端、切れ長の瞳に睨まれ、心ごと奪われたように動けなくなる――
???
「…………」
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