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悪戯な笑みをこぼす良に、熱くなった頬をむっと膨らませた。
あなた
「もう……あんまりからかわないで」
「ごめんって」
良はもう一度私の顔を覗き込むと、そのまま唇を寄せて……
「せっかく夢幻楼に来たんだから、思い出なんかじゃなく、今目の前にいる俺に集中して」
「……できる?」
あなた
「りょ……う」
男娼である良が、私――舞い来た蝶に、キスをする。
甘くて、とろける蜜みたいなキス。
あなた
(ああ……だめ。考えることはいっぱいあったはずなのに)
あなた
(こうしてキスされると、いつも、何も考えられなくなっちゃう)
やがて……顔を離した良は、親指で私の下唇を撫でながら、目を細めた。
「嬉しそうで、可愛い」
あなた
「……良は?」
思わずそう聞くと、良は目を瞬かせた後で、小さく頷いてくれた。その手はいつの間にか私の腰を掴んでいて……
「続きを期待してくれてるの、嬉しいよ。当たり前だろ」
「……ちゃんと応えたいから、全部、開いて見せて? ――ほら」
そのままきつく抱き寄せられ、私は鬼王良との甘く淫らな夜に溺れていく。
これからどんな物語がふたりを待ち受けているのかも、知らずに――。
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