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餓者髑髏
「夜刀さーん、すみません、迷子の蝶々様がいらっしゃるようなんですけど、この辺りに来ていませんかー?」
あなた
(迷子……それって、私のこと!? どうしよう、見つかったら……どうなるの?)
慌てていると、私の様子を眺めていた彼の羽織が広げられ……そこに姿を隠された。
夜刀
「ここにはいない。他をあたれ」
餓者髑髏
「はーい!  そうだ、指名が来ていますのでお願いします。何でも夢幻楼NO.1男娼を目当てにはるばる――」
夜刀
「ああ。いいから、もう行け」
ちらりと冷たい視線を送られたけれど、扉の前にいた彼は気にしない様子で「それじゃあ!」と去っていった。
あなた
(っ、どうしてこの人、私を庇ってくれたんだろう……それにこの香り)
服に焚き染められているのだろうか、彼から香るのか――甘く艶っぽい匂いが胸に広がる。
あなた
(どこかで嗅いだことがあったっけ? 変だな、夢の中なのになんだか眠くなって……――)
夜刀
「……? 今の女は?」
腕の中にいたはずの女が消え、代わりに、ひらひらと舞い飛んで来た蝶が指に留まる。
夜刀
「待ちわびる俺が見た、夢か。あれが俺の望みを叶える者だったなら……。いや、まさかな」
蝶は再び羽を広げ、彼もまた、目を閉じて……――
夜刀
『ここまで来れば、お前が望むことを全て、その身に教えてやろう。愉しみにしておけ』
――ハッと目覚めた私は、自分の部屋のベッドにいた。
あなた
(全部……夢、だったんだ。変な夢……あれ? でも)
身体を起こせば、私を庇い抱きよせてくれた彼の残り香が、ふわりと漂う。
あなた
「嘘。っ……まさか」
――夢であって夢じゃない。夢幻楼に架かる橋を渡る日は、すぐそこに。
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